キャリフルコンテストレポート
組み込みソフトウェアロボット、学生No.1は誰の手に!? スマートデバイス GP 全国決勝

2015年1月6日

組み込みソフトウェアロボットで学生日本一を目指すコンテスト、スマートデバイス GP。「高速自動ドライブ」「自動ブレーキ」「自動パーキング」という、クルマの世界では当たり前になりつつある3つの機能をレゴ®マインドストーム®に組み込み、そのスピードと正確さを競い合うというコンテストだ。2014年10月~11月に全国4地区で地区大会が行われ、勝ち抜いた31組が全国決勝に進んだ。今回は、2014年12月13日(土)に行われた全国決勝の模様をレポート!

工夫とアイデアを詰め込んだ走行体でスピードNo.1を
目指す!

会場は、臨海副都心エリアにあるテレコムセンター14階の「MONO」。広々とした会場内には2つの走行用コースシートが設置された。

ここでルールをご紹介。走行に挑戦できるのは2回。そしてタイムの早い方を公式結果として、順位が決定する。120秒以内にゴールできなければリタイヤ、パーキングに成功したらゴールタイムからマイナス10秒のボーナスが付与される。

コース内には、3つのチェックポイントのほかに、ヘアピンカーブ、トンネル、自動ブレーキゲート、パーキングエリアを設置。コースシートは滑りやすく、ゴムなし車輪でどのように安定的に走行させるかが最大のカギ。走行体の重心設計やギア比選択、ソフトウェアによる走行の制御などが注目ポイントとなる。走りの滑らかさは、PID制御など制御アルゴリズムの実装スキルがモノをいいそうだ。

また、レゴ®マインドストーム®の選択も重要だ。今大会では既存機種NXTと新型機種EV3を使用することができるが、前者はリアルタイムOS+C言語が主流で、事例や実績は豊富であるもののマイコン性能は低め。後者は、事例や実績は少ないものの、LinuxOS上で高いマイコン性能を活かした開発が可能と、それぞれに特徴がある。

決勝進出者は、東京、名古屋、大阪、福岡で行われた地区大会での走行を踏まえ、結晶に備えて調整を重ねてきた。努力と実力の成果を、決勝の舞台で最大限発揮するため、走行直前まで微調整を行い、テスト走行を続ける姿が見られた。

約2時間の車検・試走タイムを経て、いよいよ本番!Aコース、Bコースで2チームが同時走行し、計31チームが走行(1チームは1人ないし2人で構成)。その後、再度の試走タイムとエキシビションを経て、第2回目の走行が行われる。司会進行と解説を勤めるのは、ETロボコンの実行副委員長であり、株式会社アフレル事業企画室室長の渡辺登さんと、MCの村上恵さんだ。

各チームとも、30秒のキャリブレーション(調整)の後、走行スタート。試走とは異なり、本番ならではの厳粛な雰囲気とギャラリーの多さに、出場者は皆、緊張の面持ちだ。

コースアウト続出!
一方で難所を次々クリアするチームも

1回目の走行は、悲喜こもごもだった。
センサー値の設定ミスでスタート地点から全く動けなかったチーム、スタートしたものの、すぐに大きくコースアウトしてしまったチーム、同じ場所でクルクルと回り始めてしまったチームなど、スタート時点やスタートしてまもなくリタイヤを余儀なくされたチームが続出した。スタート時、光センサーがライン上から少しずれていただけでも走行に大きな影響を与える。キャリブレーションの時間を最大限、有効活用するのが重要なようだ。

好スタートを切れたとしても、油断はできない。初めの難所は、コース中盤のヘアピンカーブ。ここでラインを見失い、大きくコースアウトするチームが続出した。一定の速度を担保しつつも、車体がブレないよう重心の位置を調整したり、光センサーの設定や位置、数などを工夫することが必要になる。

これらをクリアした走行体は、次なる難所であるトンネルに向かうことになる。トンネル内は明るさが変わるため、ライントレースに大きな影響を及ぼす。光センサーのライン検知調整といった、閾値設定がカギとなる。ここまでのコースをクリアできたチームは、多くはトンネルも難なく通過したが、トンネル内でストップしてしまうところも。「光センサーの数を追加したのに…」と肩を落とした。

最後の難関は、ブレーキゲート。衝突防止機能のように、障害物を検知することが必要だ。超音波センサーなどで距離を計測し、制御するが、残念ながらゲートに接触してしまったチームもいくつかあった。接触はタイム減点のペナルティーが科せられる。

その後、スタート地点に戻り、ゴール!ゴールゲート通過後に設置されたパーキングエリアに、壁に接触せず無事に駐車できたらマイナス10秒となるが、1回目は見送るチームが多かった。その中、果敢にチャレンジし、無事に成功したチームにはギャラリーから大きな拍手が送られた。

なお、1回目の走行で見事、完走できたチームは半数にも満たなかった。試走時にトラブルが見つかったものの調整が間に合わなかったチーム、ライントレースがうまくいかなかったチーム、スピードを出し過ぎて重心がずれてしまったチームなど、さまざまな課題が浮き彫りになったようだ。「上位に入るためにいろいろ工夫を凝らしてみたが、まずは完走できないことには…」と悔しさを吐露する人もいた。
渡辺さんからは「予想よりも完走率が低いですね。地区大会でのタイムが速かったので、皆さん決勝で勝負をかけたためでしょうか。後に行われる第2回目の走行では、1回目に失敗したチームは調整し、完走できたチームはさらに攻めてほしいですね」と語っていた。

1回目の走行結果を踏まえた調整は、
成果につながるのか!?

2回目の走行に入る前は、30分間の試走タイム。同時にエキシビションとして、11月に行われた「ETロボコン2014」で高い成績を収めた宇部工業高等専門学校のすばらしい競技が披露されたが、興味津々で観ていたのは1回目に予想通りの走行が出来たチームと、出場関係者の皆さんばかり。出場者の多くは最終調整に没頭し、特に1回目に失敗したチームは直前まで調整と試走を繰り返していた。

そして、いよいよ2回目の走行がスタート!万全を尽くしたという自信と覚悟が見える人、まだまだ調整不足で不安を隠せない人…出場者の表情はさまざまだった。

2回目の走行も、波乱の展開だった。1回目に順調に完走できたものの、2回目ではスタートで逆走してしまったり、いきなりコースアウトしてしまったチームが。「1回目の成功を踏まえ、さらにスピードが出るよう調整したものの、それが仇となった」、「いいPIDの検地を求めるのが課題だとわかった」などの声が聞かれた。残念ながら2回とも途中リタイヤとなってしまったチームもあり、「プログラミングスキルのなさを痛感した」との反省が聞かれた。一方で、1回目はスピードを重視しすぎて失敗したため、完走を目指して慎重なプログラミングを行い、完走に成功したチームもあった。「実装中にPID制御を見直すことができた。トルクが上がるので5倍ギアを取り外して臨んだのもよかった」との声があった。

2回目に完走できたチームは、約半数の14チーム。ほとんどが、ボーナスタイムを狙ってパーキングにチャレンジした。全てに成功したチームからは、「1回目よりも速度も出せた上にパーキングにも成功して満足」、「今できる最善を尽くした結果、成功できたので、達成感がある」と喜びの声が挙がった。渡辺さんからは、「1回目を踏まえて結果を出せたチームもあったが、やはり完走率は低かったように思う。最後のチューニングがうまくいかなかったのかな。また、夕方に差し掛かり、ブラインドの隙間から入り込む夕陽の具合も影響したと思う。環境の変化にどう対応するかも課題」との意見が聞かれた。

全チームの順位を発表!
上位入賞チームは驚きのタイムに!

全走行終了後、急ピッチでタイム集計が行われ、いよいよ結果発表の時が訪れた。最下位である28位から順に、スクリーンにチームナンバーが映し出されていくという緊張感のある発表方法(順位の重複あり)に一瞬どよめきが起こるも、皆真剣な表情で自分のチームが映し出される瞬間を待っていた。早い段階でチームナンバーが挙がったチームは、覚悟の表情だったり、思ったよりも早く呼ばれて残念そうな表情だったり…と様々。

そして、ベスト10の発表。第10位のタイムは、33.56秒という好結果。「これで10位?」との声も聞かれた。順位が発表されるたびに、タイムはどんどん縮まり、第4位の段階で17.60秒という驚異の結果に。第4位の角田広樹さん(チームナンバーD-011)は東京地区大会の優勝者だが、残念ながらあと一歩、ベスト3には届かなかった。

そして、ベスト3の発表!
第3位は、タイム16.37秒をマークした神戸電子専門学校の伊藤駿さん、田中優丞さん(チームナンバーC-001)、第2位は、タイム16.08秒の京都高等技術専門校・伊藤佑介さん(チームナンバーA-002)、そして栄えある第1位は、タイム14.51秒という驚異の成績を挙げた崇城大学の安倍俊宏さん、野嶋直哉さん(チームナンバーB-002)となった。皆さん、おめでとうございます!

<成績上位者のコメント>

1位:安倍俊宏さん、野嶋直哉さん(チームナンバーB-002)

重心を低くすることにより、安定した走行を目指しました。地区大会では第4位とタイムが遅かったので、ギアをかませたらライントレースがうまくいかず、パラメータをいじっては試走を繰り返しました。全国大会で1位を残せて本当に良かった。初代グランプリとして、機会があったら連覇を狙いたいです。

2位:伊藤佑介さん(チームナンバーA-002)

各地区大会での上位の秒数が分かっていたので、それに合わせて今回の走行体を完成させました。100%の力で臨みましたが、PID制御は難しいですね。ただ、今年5月からETロボコンに向けてやってきたので、その経験の分、今回有利だったのだと思います。7万円の賞金は、学校の後輩のために。もし来年の大会があれば、ぜひ優勝を目指してくれることを期待しています。

3位:伊藤駿さん、田中優丞さん(チームナンバーC-001)

地区大会はギアを付けずに挑戦しました。決勝戦では装着しようと考えハードをいじったところ、いじりすぎて時間がかかってしまい、1週間前にようやく今の形に収まりました。重心をタイヤの上に置いたのもポイント。3位入賞は嬉しいですが、次がまたあるならば1位を狙いたいですね。

解説者・渡辺登さんのコメント

今回のテーマは、「未来の『走る』『曲がる』『止まる』を実装せよ」。これができれば、今後さらに技術を探求することで世界に影響を与えられると考えています。そういう可能性を秘めている学生が、増えていると感じますね。皆さんまじめにソフトウェアや制御工学を学び、アウトプットを出すことに意欲的で、頼もしさを覚えます。今大会に出場した学生が、10年後に我々が乗る車を作っていたら、最高に幸せですね。

[EDIT/WRITING] 伊藤 理子 [PHOTO] 平山 諭