Careeful Life ―持ち味を活かして働こう!―

2014年10月6日

素晴らしい実績を持ち、各界の第一線で輝くその道の「プロ」は、自分の“持ち味”にいつ、どのようなきっかけで気づいたのでしょう?著名人にエピソードを伺うこの連載、第4回は、59種類の栄養素を持つ“藻の一種”ミドリムシ(学名:ユーグレナ)の研究開発、生産、販売を手掛ける株式会社ユーグレナの代表取締役社長、出雲充さんに話を伺いました。

ミドリムシこそが、地球上の食料問題を解決できる!
そう確信し、事業化に没頭する過程で、
最も力を発揮した持ち味は「人を巻き込む力」でした

事業化を実現するには、自分にはない力を持つ人材の
巻き込みが必要不可欠だった

当社が扱っている「ミドリムシ」は、動物と植物の性質を併せ持つ藻の一種です。人が生きていく上で必要な栄養素をすべて備えている食材であるうえ、二酸化炭素を光合成時に固定し酸素を作り出すことから、製鉄所や火力発電所などから発生する二酸化炭素の吸収への活用やバイオ燃料などの研究も進められています。

このミドリムシを事業化しようとしたときは、多くは反対しました。成功する見通しもないモノに、人生を賭けてどうするのかと。
でも、賛同者を一人ひとり集め、現在では社員数69人にまで拡大しました。ミドリムシの効能の認知が広がるとともに活用範囲も広がり、事業も順調に拡大。株式上場も実現できました。

自分一人の力では、到底ここまでできません。自分にはないスキルや持ち味を持った人にたくさん賛同をいただき、ご協力いただいたからこそ、今があるのです。そんな私が、今までを振り返って「これこそ自分の持ち味だ」と自信を持って言えるのは、「人を巻き込む力が強い」ことです。

子供のころから漠然と海外に対する興味、関心があり、高校時代には「国連の職員になって、世界各国の飢餓問題を解消する」という夢を抱いていました。

初めて海外に渡ったのは、大学1年生のとき。飢餓と貧困の国というイメージを持っていたバングラデシュに行き、飢餓の現場を体感しようと考えたのです。

しかし、学生時代からイメージしていた世界は、そこにはありませんでした。食べ物がなく、お腹を空かせている人は全くおらず、クッキーなどのお菓子を配ろうとしても誰も欲しがりませんでした。実は、コメやイモ、小麦などの炭水化物は、世界70億人の人類すべてをまかなえるだけの量があります。つまり、空腹という意味の飢餓はほとんど存在しないのです。それを知ったときは愕然としました。自分が抱いていたものは、実に自分勝手なイメージだったのだと。

しかし、バングラデシュでは多くの人が栄養失調に陥っている。何が問題なのかを帰国後に調べたところ、後進国と呼ばれる国においては、炭水化物以外の栄養素が決定的に足りてないことがわかりました。つまり、炭水化物は十分にあるものの、野菜や肉、魚などが十分に摂取できないため、ビタミンやたんぱく質が不足している。この問題を解決することが私の目指す道だと考え、当時在籍していた文科三類から、農学部に転部しました。

そして、出会ったのが「ミドリムシ」でした。その機能、効能を知ったときは、雷に打たれたような衝撃でしたね。ビタミン、ミネラルのほか、人類に必要な必須アミノ酸全てが含まれているミドリムシ。これこそが、世界の食糧問題を解消し、地球を救うと確信しました。

これだけの機能、効能を持つ物質ですから、すでに多くの研究者が注目し、さまざまな論文が世に出ていましたが、大量培養については誰も実現できていませんでした。大変なことだとは、わかっています。しかし、「ミドリムシは人と地球を健康にすることができる。自分の手で大量培養を実現したい!」という強い想いが湧き起こるのを感じました。

とはいえ、自分にあるのは、ミドリムシに対する情熱と、大量培養して地球を救うという壮大なビジョンだけ。事業化を進めるには、自分にはないスキルを持った人の賛同を集め、仲間に「巻き込む」ことが必須でした。そこで、ミドリムシの研究は鈴木健吾(現・取締役研究開発担当)に、営業・マーケティングは福本拓元(現・取締役マーケティング担当)に…というように、一人ずつ、専門分野に秀でた人を巻き込んでいきました。資金集めや研究においても同様です。出資を依頼するために100社以上の企業を回り、全国各地のミドリムシ研究の先生方に協力を仰ぎ、知見を参考にさせていただきました。これにより、大量培養技術の確立、生産が可能になりました。

想いに一貫性があれば、それに共感してくれる人が必ず現れる

「巻き込む」ために私が大事にしているのは、一貫性。言うたびに内容がコロコロ変わったり、軸がぶれたりすると、相手の不信感を招きます。相手によって言うことが変わるのも同様。私はいつでも、誰に対しても、「ミドリムシで人と地球を健康にして、世界を救おう。一緒にやってくれれば、必ず成功できる!」と信念を持って伝え続けてきました。

普段の生活においては一貫性がまるでなく、例えばオフィスのある飯田橋から大手町まで行くのに何線を使えばいいのか毎回悩むほどのブレまくりの私ですが、ミドリムシに対する想いには全くブレがありません。だからこそ、優秀な人材がその想いに多数賛同してくれて、ミドリムシをここまでメジャーなものにできたのだと思っています。

優秀な人材が集まることで、仕事の幅が広がれば、ますます新天地が広がり、経験のないことに挑戦する機会が増えます。例えば、今年は初の試みとして、バングラデシュの小学生にミドリムシ入りの給食を年間約60万食提供することになりました。このチャレンジが決まったことで、私よりも英語やベンガル語に詳しい人が、当社に参加してくれました。今後も、「新たなチャレンジが増える→力を発揮してくれる人を巻き込む→さらに新たなチャレンジが増える…」が繰り返され、その先に「ミドリムシで地球は救われた、と皆が実感する世界」があるのだと思っています。

やる前に考えすぎない。やりたいと思ったら、それに没頭してみる

自己分析をして、「私の持ち味とは?」を机上で一生懸命考えるよりも、私は「好きなこと、やりたいことに没頭する」ことをお勧めします。

好きなことに没頭している人は、傍から見ればとても輝いていて、魅力的です。そういう人を、周りは放っておきません。その人の特性を見出し、「そんなに面白いならば、これもやってみない?」と声がかかるはずです。
つまり、好きなことに没頭さえしていれば、周りが勝手に持ち味を判断して、評価し、買ってくれるものです。そして、自然に新たなチャレンジの機会が与えられ、そこで成果が出たらさらに没頭して、持ち味がどんどん磨かれていく。それを繰り返すことで、「これは自分の持ち味だ」と自信を持って言えるようになります。

頭のいい人ほど、好きなことに没頭しにくいものです。事前に分析し、シミュレーションして、周りのアドバイスもきちんと仰ぐから、やるまえに「やっぱり無理かも」とジャッジを下してしまう。でも、やらないうちから勝手に想像するなんてムダなことです。学生時代に私が想像していた「世界」の姿は、バングラデシュに行ったことで根底から覆されましたからね。

好きなことに没頭できれば、いつか必ず持ち味が開花して、うまくいきます。「ミドリムシ」みたいな、誰もが得体が知れないだと思っていたものでも、どうにか軌道に乗りつつあるのですから、どんなものだってうまく行きますよ(笑)。自分の「好き」の感情に自信を持ってほしい、と言いたいですね。

“持ち味を見つけるためのヒント”

① 常に一貫した想いを持って、好きなことに打ち込む。

② 事前に勝手にイメージしたり、シミュレーション
し過ぎない。体感することを大切に。

[EDIT/WRITING] 伊藤理子 [PHOTO] 平山諭

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