Careeful Life ―持ち味を活かして働こう!―

2014年8月28日

今をときめくその道の「プロ」は、自分の“持ち味”にいつ、どのようなきっかけで気づいたのでしょう?著名人にエピソードを伺うこの連載、第3回は1998年の格闘ゲーム世界大会で世界一となり、現在は日本で初めてとなるプロ・ゲーマーとして世界で活躍するほか、著書『勝負論 ウメハラの流儀』がヒット、ゲーマーとしての軌跡が『ウメハラ To live is to game』で漫画化もされている、梅原大吾さんに話を伺いました。

一度は本気で諦めたゲームの世界。
別の仕事を経験し紆余曲折を経たからこそ、
プロとして覚悟を持って、仕事に挑めています。

才能は関係ない。好きならば努力できるし、上達できると信じていた

格闘ゲームに出会ったのは、11歳の時。筋骨隆々のキャラクターが、迫力満点にバトルを繰り返す。なんて面白いんだ!とその魅力に取りつかれました。

もちろん、初めは負けてばかり。子供の頃は、さほど練習しなくても勘がよくて才能があるやつがいるんです。悔しかったですね。でも、才能なんて関係ないと思っていました。努力すれば、絶対に上達すると思っていたし、何よりゲームが大好きだったから。

「好きだからやる」というのは、無敵の動機だと思っています。「得意だからやる」というのもポピュラーな選択方法ですが、それだと自分より得意な人が現れたとき、そこで行き詰まりを感じてしまうかもしれません。その点、「好き」は、嫌いにならない限りは崩れません。スゴい人が現れようと、壁にぶち当たろうと、好きだから頑張る、好きだから上を目指せる。そう思うからです。

もちろん、初めからプロを目指していたわけではありません。生まれ持っての才能があったわけでもありません。でもそんな自分が世界一になることができ、いま一生の仕事としてゲームに向き合っている。いま改めて思い返してみると、自分が周りの人と少しだけ違ったかなと思うことは、「”好き”を持続させる力」が人並み以上に強かったということ。もう一つは、「どんなに小さな歩みでも一歩ずつ上を目指そうとする力」があったこと。ただそれだけだと思います。

ゲームを始めてからは、空き時間やお小遣いは全てゲームに費やしました。17歳の時に、自分の実力を試してみたくて出場した格闘ゲームの大会で世界一となりました。当時は、1日に7時間、週に50時間以上は、ゲームに時間を割いていたと思います。高校卒業後も進学はせず、アルバイトをしながらゲームに没頭しました。そんな毎日を送りながら、心のどこかでは、「ゲームでは食っていけない。将来どうすればいいんだろう」という不安は常にありました。

22歳の時、いったんゲームの世界から離れることになります。その頃、アルバイト先にいた同級生3人が大学を卒業し、就職のために一斉にアルバイトを辞めたんです。この時、「今が潮時なのではないか。将来を考えて、自分もちゃんとした仕事に就こう」と決意しました。ちょうど周りに強い対戦相手がいなくなり、「この人を追い抜きたい」という目標もなくなり、ゲームは一通りやり切った感がありました。

さて就職しようと思い立ったものの、ゲームばかりやってきたので世の中にどんな仕事があるのかわからないし、やりたいこともピンときません。そこで、同じ勝負の世界ならば頑張れるだろうと考え、麻雀の世界に入り、プロを目指すことにしました。でも、しばらくすると壁にぶつかります。仲良く対戦していた人であっても、自分が強くなり、勝ち続けると、関係性が変わっていく。勝って人に恨まれたり、ねたまれるのが嫌になったんです。

介護の世界で「時間は有限」と痛感し、プロ・ゲーマーになる決意をする

次に飛び込んだのは、介護の世界です。両親が医療関係の仕事に従事していたので、身近に感じたというのが選択の理由。何となく選んだ職場でしたが、ここで大きな気づきがありました。介護施設の入居者の皆さんは、自分が今、普通にできていること…歩いたり走ったり、友達とおしゃべりしたり、ご飯を食べたりすることが、できない人たちばかりでした。病気が進み、自分のことも周りのこともわからなくなっている人もいました。でも、この方々にも若い頃があったんです。

時間は有限。年を取れば誰しも徐々に体の自由が効かなくなり、思考も低下してしまう。やりたいことがあっても、頭や体が、それを許さなくなります。やりたいことを、後回しにしたらだめなんだ。やりたいと思ったら、すぐにやらなくては――そう強く思うようになりました。

介護の仕事を始めた頃、友人の誘いでずっと離れていたゲームを再びやるようになっていました。初めは、会社帰りにゲームセンターに通ってプレイするぐらいだったのですが、徐々に「梅原がゲームの世界に戻ってきた」と噂になり、大会の誘いも入るように。そして、海外のゲーム会社から「スポンサーになるからプロにならないか」と声を掛けられていました。でも、ずっと断っていたんです。せっかくこの仕事にも慣れてきたのだから、と。

でも、介護の仕事を続け、「時間は有限」を毎日痛いほど感じる中で、徐々に考えが変わっていきました。自分が大好きで、やりたいと思っているのは、ゲームじゃないのか?今、プロにならなかったら将来必ず後悔するのでは?後悔を抱えたまま、年を取っていいのか?…と。

「好き」が生み出す力は強いし、自身の持ち味を再認識することもできる

そして2010年に、プロになりました。
一度は飛び出したものの、またゲームの世界に戻ってきたので、「他の仕事なんてせず、もっと早くプロになっていればよかったのでは?」なんて言われることもありますが、私はそうは思いません。

もしも、20歳そこらでプロになっていたら、ここまでの強い思いと、プロとして頑張り抜く覚悟を持って、ゲームに臨めていただろうか?と思うからです。

違う世界に飛び込み、紆余曲折を経てきたからこそ、やっぱりゲームが心から好きだと思えたし、自分が持つ「”好き”を持続させる力」、「一歩ずつ上を目指そうとする力」も再認識することができた。もう、心がブレることはありません。

“持ち味を見つけるためのヒント”

① 「好き」という気持ちを何より大事にして、
その物事に真剣に向き合う。

② いきなり大きな目標を設定するのではなく、
小さな目標を掲げて、その小さな目標を工夫して
クリアしていくサイクルを回してみる。

[EDIT/WRITING] 伊藤理子 [PHOTO] 平山諭

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