Careeful Life ―持ち味を活かして働こう!―

2014年8月8日

素晴らしい実績を持ち、各界の第一線で輝くその道の「プロ」は、自分の“持ち味”にいつ、どのようなきっかけで気づいたのでしょう?著名人にエピソードを伺うこの連載、第2回は現役のプロバスケットボール選手であり、ナショナル・バスケットボール・リーグ(NBL)の選手会長も務めながら、公認会計士としても活躍する、岡田優介さんに話を伺いました。

バスケットボール選手と、公認会計士。
難易度の高い2つを突き詰めることで双方のモチベーションが上がり、自分自身も輝けることに気づいた

大好きなバスケットボールの知名度を上げたい。そのために自分は何ができるのか?

小学生の時、何気なく始めたバスケットボールの魅力に取りつかれ、中学でバスケ部に入部した時には「将来はプロになる」と決めていました。当時の身長は、すでに170cm超。身体的に有利だし、自分が輝けるスポーツだと感じたんです。そして、大学卒業後にトヨタ自動車アルバルクに加入し、2009年には日本代表に…と、夢に向かって一直線に突き進んできました。

一方で、2010年に公認会計士の試験に合格。現在、監査法人で非常勤として働いています。バスケットボール選手にもかかわらず、公認会計士になぜ挑戦したのか?とよく聞かれますが、きっかけ自体は単純なものでした。

社会人チーム入りを目前に控え、バスケの知名度の低さを改めて感じていました。バスケットボールの知名度を上げたい。そのために自分は何ができるのか。「公認会計士」という社会的に認められた難関資格に合格することで、バスケの価値を高めていく活動をスムーズに行うための武器になるのでは?と考えたのです。通信で学べる講座も見つかり、バスケの練習と勉強を両立できるとも思いました。

もともと勉強は好きで、いくら部活が大変でも「学生なら勉強するのは当たり前」と思っていました。大学時代は都内の自宅から2時間かけて相模原のキャンパスに通っていましたが、行き帰りの電車の中では勉強に没頭。毎日の練習で疲れてはいましたが、せっかくの貴重な時間に寝てしまうなんてもったいない。負けず嫌いの性格もあり、バスケでも勉強でもトップを目指す!という気持ちで取り組んでいました。実際、成績もよかったので、公認会計士を目指すと決めた時も「自分ならば練習と両立しながら効率的に勉強できて、早晩合格できるだろう」とタカをくくっていました。

でも、実際に勉強を始めてみて、「甘かった!」と思いましたね。科目数が非常に多く、覚えなければならないことの絶対量が膨大。勉強しても勉強しても、またすぐ次の教材がドッサリ送られてくる。なんとか次のステップに進んでも、しばらくして前の復習をすると、ほとんど頭から抜け落ちているんです。何度となく、頭を抱えました。

自分自身の強みに気付いたことで、毎日がより楽しく過ごせるようになった

でも、途中で投げ出さなかったのは、大変ではあったけれど、辛くなかったからです。
勉強を始めたばかりの大学時代、オフシーズンに勉強のみに集中してみたんです。すると、練習と両立していた時よりも疲れを感じてしまい、集中力が途切れてしまうことに気づきました。そこで、勉強の合間にバスケの自主練を取り入れてみたところ、勉強の能率がぐっと上がるように。その時、「自分は複数の目標を追うことで、より力を発揮できるタイプなんだ」と気付いたんです。

そもそも私は、「一つのことを深く突き詰める力」については人より長けていると感じていました。バスケにおいては、普段の練習はもちろん、シューターとして「どうすればより精度の高いシュートが打てるか」を、さまざまなシーンを想定してひたすら練習し続けました。学校の勉強も、それを義務とは思わず、「知りたい!」と思ったことは授業の枠を超えて自ら調べ、習得してきました。
また、「切り替え力」も高い方だと自負していました。バスケに打ち込む時間はそれに没頭し、学校の勉強をすると決めた時間はひたすら勉強に費やしました。

公認会計士の勉強を始めたことで、もともと持っていた「一つのことを深く突き詰める力」と「切り替え力の高さ」という自分の2つの持ち味が相乗効果を挙げ、「複数のことに同時に没頭することで、より高い力を発揮できる」という気づきにつながったのだと思います。それからは、バスケの練習が勉強へのモチベーションに、勉強がバスケのモチベーションになっていると感じられ、それぞれの時間がとても楽しく充実したものになりました。

そして、勉強を始めて4年後の2010年、公認会計士に合格しました。努力が報われた!と本当に嬉しく思いましたね。とはいえ、ただ資格を取っただけでは意味がありませんから、選手としての活動と並行するために非常勤で今の勤務先に雇ってもらい、シーズン中は週1の休日に出勤し、オフシーズンは毎日通って実務経験を積んでいます。

自分のテリトリーを、意識して越えてみる。それが持ち味に気づく第一歩

公認会計士に合格し、実際に働くようにもなってから、期待通りメディアに取り上げられる機会が増えました。具体的な成果はまだわかりませんが、 バスケの知名度向上につなっているのではないかと感じています。最近では、自ら会計塾を開き、講師にもチャレンジしています。せっかく得た知識や勉強のノウハウを広く伝えたいと思う一方で、これによりバスケに興味を持ってくれる人が一人でも増えたら…と思っています。

休みは全くありませんが、疲れることはありませんね。全てがやりたいことであり、バスケの魅力を広めたいという確固たる目標があるから。そして、バスケを軸としつつ複数のことにチャレンジし続けることが、私が輝ける方法であり、原動力になっているとわかっているからです。これからも自分の持ち味を活かして、二足のわらじを履きながらどんどん新しいことにチャレンジし続けたいと思っています。

自分の経験から考えると、“持ち味”というのは、今までの自分のテリトリーとは異なる、全く新しいことにチャレンジしてみることで気づけるものかもしれません。私の場合、公認会計士という未知の分野に飛び込むことで、2つを追うことでどちらの効果も上げられるということもわかり、「一つのことを突き詰める性格」「切り替え力」という自分の持ち味に改めて気づかされました。

「自分はこういうタイプだから」と、自分の価値観の中だけにとどまっていては、発見はありません。がむしゃらにチャレンジし、追究する過程で、新たな気づきを得たり、自分の可能性を知ったり、出会いがあったりして、思いもよらない道が開ける可能性があるのではないかと思います。

“持ち味を見つけるためのヒント”

① チャレンジを始めたら、
とことんまで極めようとする努力を

② あえて、未知の分野にチャレンジしてみる

[EDIT/WRITING] 伊藤理子 [PHOTO] 平山諭