Careeful Life ―持ち味を活かして働こう!―

2014年7月15日

新卒採用の現場では昨今、個人のスキル・資格、過去の経験などから見える“持ち味”を重視して採用を行う動きが高まりつつあります。では、われわれ個人は、どのように自身の“持ち味”を捉え、就職先を選べばいいのでしょうか?慶應義塾大学名誉教授でキャリア論の第一人者として知られる花田光世氏に語っていただきました。

プロフィール

慶應義塾大学名誉教授
慶應義塾大学SFC研究所キャリア・リソース・ラボ代表
花田光世氏
慶応義塾大学文学部心理学科卒業後、南カリフォルニア大学大学院で社会学博士号を取得。産能大学経営情報学部教授、同大学国際経営研究所所長を経て、1991年より慶應義塾大学総合政策学部教授。1999年より同大学SFC研究所のキャリア・リソース・ラボ代表を務める。専門領域は人的資源開発論・キャリア論、国際人事システム論、新人事組織設計論など。著書に『「働く居場所」の作り方~あなたのキャリア相談室』(日本経済出版社)など。

就活において「企業選び」にこだわり過ぎることは
ない。個人の“持ち味”は、仕事を通じて作られ、
磨かれていくもの

いま“持ち味”と思っていることも、いずれは変化する。決して捉われすぎないこと

そもそも、“持ち味”って、何でしょう?

私は、人が持つ「総合的な力」のことを指すと考えています。例えば、問題対応力や、決断する力、修羅場の乗り越え方など、個人が持つ能力には様々なものがありますが、それらを総合した「人それぞれが持つ総合的な力=人間力」が“持ち味”なのだと捉えています。

持ち味を短時間の面接でアピールすることはなかなか難しいですよね。様々な場で経験を積んだ実務家であってもなかなかできることではありません。テストなどで自分の特性を把握し、それを自分の意志で意図的にのばす努力をするのも不可能ではありませんが、それを現場経験のない方が、しかも一人で行うことはとても大変です。むしろ、そのような力は、入社後に様々な業務や人間関係を通じて、じっくり時間をかけて醸成されていくものという視点をもっていただくことも重要です。

いま、「これが私の持ち味だ」というものを持っていたとしても、それは仕事をするうえでどんどん変わっていきます。新しい仕事を経験し、新たな力を身に付けたり、新しい自分の強みに気づかされる場面は、たくさんあるはずです。当然、企業だって変わります。「この会社は自分に合いそう。力を発揮できそう」と思って入社を決め、実際に合うと感じたとしても、10年後、20年後には合わなくなっているかもしれません。自分を客観的に見たときの他者との違い、強みになり得る部分を知っておくことは重要ですが、それにこだわりすぎる必要はないと、私は思います。

個人が“持ち味”を把握し、それを発揮するには、「本人の努力」と「その人を育てる上司のスタンス」の両方が大切になってきます。

慶應義塾大学産業研究所で、「係長、課長に昇進する人の条件」を調査したところ、「入社後最初に配属された部署の上司から、どれだけきめ細かい指導を受け、総合的な力の重要性を認識し身につけることができたかかどうかが、その後の成長に大きく影響している」ことがわかりました。仕事そのものだけではなく、仕事への取り組み姿勢や、仕事における作法など、新人のうちに上司から一からじっくり教えてもらうことができた人は、より自身の“持ち味”を発揮することができ、社内で重要な役割を担っていくことができるようになるのです。

入社後、上司に「成長させたい、持ち味を引き出してあげたい」と思わせる努力が重要

とはいえ、「自分を育ててくれる上司がいる組織」を就活時に見つけることを学生さんに求めることは酷ですよね。
不可能に近いでしょう。それに、会社や組織に加えて、「上司の資質」や育成の方針などを事前にしることは不可能です。そこで、個人ができる「努力」として重要なのは、どんな上司のもとで働くことになったとしても、上司となる人に「この人を成長させたい。“持ち味”を引き出してあげたい」と思わせること。すなわち、与えられた仕事を選り好みすることなく、どんな仕事に対しても一生懸命、真摯に取り組む姿勢を示すことです。

嫌な仕事、嫌な先輩に出会うことがあるかもしれません。学生時代は嫌なことは避けて通れましたが、社会に出たらそういうわけにはいきません。嫌なことでも逃げずに取り組めば、それが自分の力になり、上司に「頑張っているな。育ててあげたいな」と思わせることができ、さらに新しい「仕事」も舞い込むようになります。その繰り返しで、人は新しい自分の“持ち味”に気付いたり、今ある“持ち味”を磨き、成長していくのです。

だから、就活時に意気込みすぎなくても大丈夫。ただ自分の持ち味を伸ばしてくれる環境に出合う可能性を高めるために、できるだけ深く企業と、その企業で働く人を知ることは大切だと思っています。たくさんの企業に手当たり次第にコンタクトし、出合いを求める必要はありません。「深く知る」というところに重点を置いて欲しい。その一つの機会がインターンシップなどの職業体験。社員や管理者の方、人事とじっくり話をして、「この会社の人はなんかいいな」と思えたら、そこがあなたの“持ち味”を育てる場所。そう考えていいと、私は思います。

[EDIT/WRITING] 伊藤理子 [PHOTO] 平山諭

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